かいじゅうのくらし

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フィリップ・パレーノ展@ワタリウム美術館 に行ったので考察を記録する

フィリップ・パレーノ展「オブジェが語り始めると」 @ワタリウム美術館 に行ってきました。

www.watarium.co.jp

せっかくなので考察を残しておきます。

※あくまで個人の見解です。自分なりの解釈なので、本来の意図とは違うかもしれません。。。

全体を通して

「オブジェが語り始めると」という題の通り、オブジェ=物体=本来は語らないもの、の語りにあえて耳を傾けるということが主題なのかなと解釈しました。物体の、存在それ自体の声を聞こうという試みなのだと思います。

しゃべる石(2018)

石の横に置いてあるスピーカーから音声が流されていて、さも石がしゃべっているかのような展示。

石とは、物体=しゃべらなさそうなもの、の象徴であるのだと思います。しゃべらなさそうなもの、にあえてしゃべらせることで、わたしたちが普段「これはしゃべらないだろう」と決めつけているもの、あるいは見落としているものが、実はしゃべるかもしれないよ……ということを示唆しているのでは。

ハッピー・エンディング(2014−15)

見た目としてはランプが置いてあるだけ。このランプは『しゃべる石』の「しゃべり」に呼応して点滅するので、なんならランプも喋っているように見えます。それがねらいなのかな。『しゃべる石』と同じく、本来はしゃべらないものにあえてしゃべらせるという試みなのでしょう。

また、この『ハッピー・エンディング』と『しゃべる石』が連動して動いているということは、展示(オブジェ)どうしは互いに関わりあっているのだというメッセージでもあると思います。パンフレットにも次のように書いてあります。

ここで、オブジェたちは互いに会話し始める。 それぞれのオブジェ同士には関係がある。カメラを通して、ワタリウム美術館周辺の気圧や風の方向などの細かな出来事にも反応する。すべては空気の変化や換気に反応している。

ここには、まさに「オブジェ同士の関係」がつくられているのだと思います。

花嫁の壁(2018)

見た目は透明のアクリル板で作られた直方体。中に小さなランプが閉じ込められていて、この小さなランプも『しゃべる石』の「しゃべり」に呼応して点滅します。

パンフレットには次のように説明があります。

本作にはフィリップ・パレーノや、他のアーティストの小作品をかけることができ、メディアとしての展覧会を現在進行形で探求するという、パレーノの中心的なモチーフを体現しています。パレーノによると、《花嫁の壁》は”準−客体”です。(中略)サッカーにおけるサッカーボールのように、自ら動く主体とは言えないが、状況を導いていくのでただの客体ともいえない物体を指した言葉です。パレーノにとっては、展示の文脈との関係性から切り離せないオブジェという存在を表しています。

『花嫁の壁』が透明なのは、このオブジェそのものが”準−客体”であるということを意味しているのではないでしょうか。なぜなら「透明」な物体は、その向こうに透けるものによって色が変化するからです。だから『花嫁の壁』は「展示の文脈」によって色を変えるオブジェなのです。

また、アーティストの小作品をかけることができるという点から、『花嫁の壁』には「額縁」的役割が与えられていることもわかります(そもそもこの『花嫁の壁』には、《花嫁》というデュシャンの絵画がかけられていたらしい)。つまりそれ自体がひとつの作品でもあるし、他の作品を引き立てるまさに「壁」にもなり得るということです。

『花嫁の壁』はそこに何を掛けるか、あるいは掛けないかによってアイデンティティを変えるオブジェです。だからこそ、それを体現するかのように自身は透明で、かつ「展示の文脈」から切り離せないものの象徴になっているのではないでしょうか。

マーキー(2016)

見た目は点滅するネオン管。ジリジリ鳴っているのですがその音がわりとデカくて、しかもいきなり点いたり消えたりするのでびっくりした。。パンフレットによると

そもそもマーキーとは20世紀初頭に登場した映画館や劇場のエントランスに設置された白熱灯が点滅する庇で、映画のタイトルや役者の名前を知らせていました。パレーノの《マーキー》の面には文字はなく、展覧会の文脈と鑑賞者の想像力に応じて様々な意味をもちます。

とのこと。3Fにあるのはこの展示のみですが、2F(『しゃべる石』と点滅するランプたち)を見た後ではこいつも心なしか喋っているように見えますね……点滅しているだけなのに。

本来は文字があるものから文字が取り去られている、というところがひとつポイントなのかなと思いました。文字は語りすぎるから。あえて文字が「ない」ことによって、わたしたちは形そのものや存在そのものにもっと注目できるのだと思います。そんな気づきを与えてくれるオブジェだと思いました。

吹き出し(白)(1997)

見た目は漫画にあるような吹き出し型の風船。当初はこの風船にスローガンを書いてデモで使うことを想定していたんだとか。ここでも文字が取り去られていることが興味深いですね。吹き出しとは、本来言葉を伝えるためのものです。でも、この吹き出しには言葉がない。それが違和感になって、見るものを惹きつけるのだと思います。

『マーキー』と同じく、風船たちは真っ白であるがゆえに、そこに何が語られているのかを想像させます。……

ところで

楽しみにしていた『リアリティー・パークの雪だるま』はこのような姿になっていました。

えっ…………。笑

よく見ると入り口にこんなカレンダーが!!

!!!!

恋人「毎週土曜日入荷なのかな……」

まとめ

美術館の空気感や、そこに差し込む日差し、そして気温(雪だるま……)なども含めて「アート」なのだな、と思う、まさに体感型の展示でした。現代美術にひさびさに触れたので楽しかったです。

2020/3/22まで開催されているようなので、気になる方はぜひ!2人以上で行くと安くなります。美術館併設の雑貨屋(ポストカードが充実!)やカフェもいい感じでした。